序章

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 徐々に、火種は育っていった。  同時に、あちこちの国で内紛や革命が起こり、軍事国家や独裁国家が次々と倒れ、民主主義国家が生まれてゆく。  だが一方で、先進国――成熟した民主主義国家では、高齢化や、長引く不況によって相次ぐ企業の経営破綻。国の借金が膨れ上がっての金融破綻。政府が、国が歪み、崩壊してゆく。  豊かになろうともがく国。  廃れてたまるかと足掻く国。  内紛になどにより、国として存在できなくなった国。  急激な国の変容により、人々の価値観もまた急速に変わってゆく。  火種が大きくなり、炎となってゆく。  それは22世紀のはじめに、『第三次世界大戦』と呼ばれる大きな戦争という形で爆発した。  その戦火は凄まじく、どんな国も無関係ではいられなかった。永世中立など、もはや意味を成さなかった。直接戦争に加わらずとも、その火の粉を避けることは叶わなかった。  どの国も、様々な形で被害を受けた。日本ももちろん例外ではなかった。  戦争の激化により、輸入に頼っていたものはほとんど手に入らなくなった。資源はもちろん食料自給率の低い日本での食糧不足は深刻になり、戦火を逃れた難民達の流入はそれに拍車をかけた。生活物資の不足、食糧の不足。資源の入手困難により電気の供給もままならなくなる。
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