序章

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 江戸時代の宝永大噴火は、宝永地震(東海・東南海・南海地震)が発生した49日後に起きている。三連動地震によって富士山の噴火が誘発されたのだ。  更に遡ること平安時代の貞観大噴火は、そのわずか3年後に貞観地震が発生している。  富士山の噴火と東海・東南海・南海地震は強い因果関係にある。  そう――。この時も、悪夢の上に悪夢が上塗りされる。  富士山の大噴火から、わずか一週間後。誘発された三連動地震、首都直下型地震によって、日本の大都市はほとんど壊滅状態に陥ってしまう。  地震によって起こった津波により沿岸部の街は廃墟と化し、津波を逃れた地域も建物はほぼ倒壊。あちこちで火災が起こり、街は焼けてしまう。  世界大戦中の、未曾有の大災害。  大戦で疲弊していた日本に、成す術はなかった。  いや、日本だけではない。世界にも日本を助ける余力などなかった。つまり差し伸べられる救いの手などなく、日本から明かりが消えた。  闇が、全てを覆い尽くす。  同時に、人々の心に火が燃え上がる。  生きるためには、もはや秩序など、倫理など、常識など、良心など、役に立たなかった。  そんなものには構っていられない。
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