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就寝中ガタゴトと音がした。
部屋は真っ暗にしていて、カーテンも遮光性が99%以上の物なので何も見えなかった。
怖いなー何の音だろう。
大学生になり一人で狭い木造立てのアパートに親の仕送りで暮らしている私はもそっと布団から抜け出した。
落ちた眼鏡を探すように手をあたふたと動かし部屋の天井の電球を点ける為にぶら下っている紐を捜した。
ようやく見つけ下に引く。
電球は数度、光を瞬かせた後ゆっくりと点灯した。
部屋が徐々に明るくなりどこか安堵感を覚える。
「一体何の音だったんだろう」
私は部屋の中をぐるりと一周するように見渡した。
突如私の真横に黒い壁のようなものが立ちふさがった。
へっ?
こんな所に壁なんてあったっけ。
私はその壁を下から見上げた。
足があった。
理解出来ずに頭が真っ白になる。
視線を少しずつ上へと舐めるように上げていく。
う、うわーーー。
人の顔があった。
ふ、不審者ー?
私は思わず声を上げようとした。
その時、男は私の口を自分の右手で封じた。
心の奥底から恐怖がゾンビのように這い上がってくる。
ひ、ひいー。
「し、しぃー。静かに……」
男は汗だくになりながら私に言った。
な、なんなのよ。この男は。私はこれからどうなるの?
「私は魔法使いです。あなたに幸せを運びに来ました」
突如として意味不明なことを言い出す男。
私は眉をひそめた。
魔法使い?
「証拠を見せましょう。はいっ!」
男が言うと部屋の模様が一瞬にして変化した。
部屋の和室に色とりどりの薔薇が出現したのである。
薔薇は畳に根を張っていた。
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