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娘さんが来てくれた驚きと嬉しさで、思わず涙腺が緩みそうになったけど、彼女の表情を見ていれば、 いろんな思いが整理しきれないのは明らかで……
彼女の顔と彼の顔を交互に見ながら、もう一度ナースの仮面を被り直す。
彼との約束を果たすことが、今の私に課せられた役目なのだと――
「お電話した山野です」そう挨拶をして、彼から預かった手紙を差し出した。
「これは?」
不思議そうに、その手紙を見る。
「岡本さんから梨花さんに渡して欲しいと頼まれていたので――」
そう説明して彼女の手に握らせた。
「私が来ると思っていたんでしょうか?」
怪訝な顔をして尋ねる彼女。
それでも
宛先も切手も貼ってある手紙を見て、それ以上は何も言わなかった。
何を今更――
そんな声が聞こえてきそうな表情で手紙をジッと見つめる瞳は、冷たい光を放ちながらも潤んでいるように見えて…
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