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2話「転校生がやってくる?」
あの日から何事もなく三週間が過ぎようとしていた。ただ一つだけ変わったとすれば、あの日から工事が中止されているという事であった。
俺はあの日の事を思い出しながら通学路を歩いていた。ほんの少しだけ記憶が脚色されているような気もするが、気にしないでおこう。
そうだ、確か俺はあの日も普通に歩いていたんだ。すると突然頭の中に、何者かの声が響きわたった。運命的とも言える、まるで天空から降り注ぐかのような綺麗な声。
俺はその声に導かれるかのように上を見た。するとそこには、まるで重力に逆らうかのように、だけどもゆっくりと、そして確実に地面に向かって舞い降りてくる美少女だった。その体は純白のワンピースに包まれており、腰までのびているであろう長い髪が風とともに踊っていた。
美少女の落下予測地点と俺が今いる地点とでは若干の距離があった。走れば間に合うだろうか?そんな事を考える前に体が勝手に動いていた。
気がつくと腕の中に美少女がお姫様抱っこのような形でおさまっていた。
俺は心配そうに美少女の顔を覗き込む。美少女は優しく微笑むと、か細い声で一言
「ありがとう」
そう呟いて気を失った。
確か、こんな感じだった気がする。
目を閉じると今でもあの時の美少女の感触と匂いが感じられるような気がした。
俺はその場で立ち止まると、お褒め様抱っこをするかのように腕を少しだけ上げ、目を閉じて、鼻から空気を思いっきりする。
周りからキモイだの何だのという嘲笑の声が聴こえてくる気もするが、そんなものは無視しておこう。
暫く美少女の感触と匂いの記憶を堪能してから俺は再び歩きだした。
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