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ただ突っ立っているだけの目の前の人に、思わず悲鳴を上げそうになる。 「……どうぞ」 相変わらずぼそぼそとした声で呟くその人は違う意味で凄く怖い。 「ど、どうも……」 「……じゃあ」 呆気にとられている私に気づいているのかいないのか、男の人は一言残すとさっさと帰って行ってしまった。 「な、何今の人…」 思わず男の人が帰って行った方向をじっと見つめる。 「ん………?」 すると、心無しか歩く後ろ姿が誰かに似ているような気がした。 あの外見とは違い、歩く姿は機敏である。 「うーん……」 気のせい、だろうな。 再びドアを閉め、ガチャンと音を立てながらドアに鍵をかける。 本来の目的地であったキッチンへ向かうと、冷凍庫の中からお目当てのものを取り出した。
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