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「重、い……っ」
放課後。
次々と生徒達が下校して行く中、私は一人ある場所を目指していた。
重たいハードカバー本を10冊も運びながら。
そのある場所とは図書準備室と言う名の倉庫部屋ーー通称「秘密基地」。
「誰が、読むのっ…これ…っ」
口からついて出る悪態を躊躇わず漏らしながら、唯一暇な足で目的地のドアを開ける。
「失礼、します…っ」
「どうぞ」
無駄に重たいドアを開けると、小牧先生の低くて柔らかい声が聞こえてきた。
窓際のデスクで仕事をしていた先生が、眼鏡を外しながら私に視線を向ける。
「ご苦労様です」
口の端を上げて軽く微笑む表情が、夕焼けが反射した水面のようになんだかキラキラして見えた。
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