界渡の虚

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しかし、彼女らは其を知らない。 『あらかじめ、“此の世界”の有り様は彼女らに与えてあるから大丈夫だろう』 と、僕は彼女らを造り出してすぐに、行方をくらましてしまったからね。 僕的には “此の世界に独りぼっちは寂しいから” と、彼女らを生み出し “彼女らも独りぼっちは寂しいだろう” と姉妹にした。 其処で完結させ、『此の世界には家族がいる』という安心感を抱いて世界を見て回っていた。 だけど。 まさか、彼女らが『自分たちを産み出した存在』を探し求める なんて思っても居なかった。 彼女らが僕を探し求めて居るのを知ってはいたが、姿を見せなかったのは理由がある。 彼女らに嫌われているのでは… そう考えたのさ。 まぁ、いきなり『知っている未知の場所を二人きりで生きろ』などと言う仕打ちをした対象は誰でも嫌いになるだろ? 例え神だとしても。 何だいその顔は… う…。 嫌われていると思うなら、何故初めから彼女らと共に居なかった。 ね。 あぁ本音を言おう。 僕は『此の世界を造り出した存在』だ。 即ち、僕には『親』が居ない。 だから。 『彼女らにどんな接し方をすれば良いかわからなかった』 それが一番の理由だよ。
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