青春桜歌

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カレンダーは正直で4月になれば春になった さなぎ色の自分を脱いで 花降る下を歩いてる 去年の今日と違うことは歳の数くらいなのに いろいろ思うことがある 大人になったなあ 花びらのようにバラバラになっていくなにかを 繋ぎとめようと開いた手から別のなにかを零す 去年と今年に咲くものは全く違うはずなのに 輪郭だけを頼りに 同じ名前を付けた なあ 俺たちの花見は なにを見ていたんだろ 花なんて見てなかったのに 綺麗だった もう 戻れない 記憶が 現在に勝てないのは 小さな花が集まった桜と同じなのかもしれない たまに思い出したように 大好きな歌手は詩の中で 戻りたいと過去を羨む 隠し味を入れてくる 去年は音と声を聞いて いい曲だと言っていた 今年は歌詞だけを読んで 曲は聴かなかった 行き先の決まった電車に乗っていてもなぜか 窓を流れてく景色を見ては あっちもいいなあ なんて 新しく便利になってく街並みに感激しては 置き去りにしていくものは 見ないようにしていた なあ 来年の花見は ちゃんとあるのかなあ 忙しさの中でうやむやになるのかなあ もう 戻れない 記憶がズルいくらい綺麗だ 羽化したての翅を千切りサナギに戻りたくなるほどに なあ なんでかな 大人と子どもの狭間で 不器用な自分が嫌いになったけど いい思い出で 丸く収まってしまうんだ 小さな花が集まってできた大きな桜のように なあ 俺たちの花見は なにを見ていたんだろ 花なんて見てなかったのに 綺麗だった 今日もいつかは綺麗な花になるんだろう 小さな花が集まった桜は来年も満開になるはずさ
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