18人が本棚に入れています
本棚に追加
カレンダーは正直で4月になれば春になった
さなぎ色の自分を脱いで 花降る下を歩いてる
去年の今日と違うことは歳の数くらいなのに
いろいろ思うことがある 大人になったなあ
花びらのようにバラバラになっていくなにかを
繋ぎとめようと開いた手から別のなにかを零す
去年と今年に咲くものは全く違うはずなのに
輪郭だけを頼りに 同じ名前を付けた
なあ 俺たちの花見は なにを見ていたんだろ
花なんて見てなかったのに 綺麗だった
もう 戻れない 記憶が 現在に勝てないのは
小さな花が集まった桜と同じなのかもしれない
たまに思い出したように 大好きな歌手は詩の中で
戻りたいと過去を羨む 隠し味を入れてくる
去年は音と声を聞いて いい曲だと言っていた
今年は歌詞だけを読んで 曲は聴かなかった
行き先の決まった電車に乗っていてもなぜか
窓を流れてく景色を見ては あっちもいいなあ なんて
新しく便利になってく街並みに感激しては
置き去りにしていくものは 見ないようにしていた
なあ 来年の花見は ちゃんとあるのかなあ
忙しさの中でうやむやになるのかなあ
もう 戻れない 記憶がズルいくらい綺麗だ
羽化したての翅を千切りサナギに戻りたくなるほどに
なあ なんでかな 大人と子どもの狭間で
不器用な自分が嫌いになったけど
いい思い出で 丸く収まってしまうんだ
小さな花が集まってできた大きな桜のように
なあ 俺たちの花見は なにを見ていたんだろ
花なんて見てなかったのに 綺麗だった
今日もいつかは綺麗な花になるんだろう
小さな花が集まった桜は来年も満開になるはずさ
最初のコメントを投稿しよう!