第1章

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ちなみに、このラーナの島国ではけしてこのような生活が主流な訳ではない。大抵の人は朝一番に始まる市場に目掛けて活動を始め、お日様のもと日中は女子供も働くことが殆ど。ある年になれば学校に通うこともできるが大抵は漁や狩り、職人見習いならば材料の調達など、それぞれがそれぞれの分野で動く。 島の中央にある高台には王族が住まう宮殿があり、その下に賑やかな城下が連なる。城下の中央通りは所謂出店や商店が建ち並び、多くの人の居住区もここに隣接している。 更に中央通りによって二分された左右の土地はそれぞれ職人達の工房や飲食店、学校などの専門的な店や組織がねぐらを構える。町はいつも活気に溢れ、人の流れや賑やかな声がたえることはない。 「そこの美人の奥さん!飾り職人ロットの新作はいかが!この首飾りをつければ男はみんな振りかえるぜぇ!」 「やだよ旦那。口がうまいんだから!」 木の葉を揺らす風のように掛け声と笑いが入り乱れる市場には暑い気候ゆえに解放的な服装の男女が目立つ。 「今朝とれたばかりの新鮮な魚介!今日はなんと王族も食べる最高級のエビも入ってるよ!さぁ買ったかった!」 「おいもはいかがー。おいらの畑でとれたあまーいおいもはいかがー」 「ひとつちょうだい」 「あいよー。まいどありー!」 老若男女、全ての民は島の恵み、サーラとグーナの恵みを一心に満喫している。ーーそう、彼が特殊なのだ。
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