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シャンッーーーー
涼やかな鈴と貝の擦れる音。回りは人だかりに溢れ今か今かと胸を踊らせている。騒がしさを増していく広場。大勢の視線と熱のこもったため息を潜り抜けながら、“ジーナ”は他のどの雅商たちよりも一際注目を集めて歩みを魅せる。
シャンッーーーー
細くしなやかな肢体を包み宙に揺れる薄布。褐色の体のあらゆるくびれを滑り鳴る装飾品(アクセサリー)はキラキラと太陽を弾いてまるで発光しているかのようだ。
シャンシャンッーーーー
“ジーナ”はレンガ造りの地面を蹴って空に飛び上がった。合図もなく始まる舞。揺れ、流れ、跳ねて滑る。神々しささえ感じる光景に人々は現実を忘れる。ーー彼女こそ、ラーナで知らぬものなどいない、女神と歌われる舞姫“ジーナ”であった。
ーーーーーーーー
「ふぅーー今日のはいいできだったな」
日はすっかり落ちてしまった。彼女は汗をぬぐいスッキリとした面持ちで夜空を見上げる。
「ジーナ!」
「ん、あぁーーレオか。どうした」
ここは中央広場。ジーナが舞を披露したその場所である。観客はもういない。夜、雅商たちが店じまいしたあとの広場には雅商たちに尊敬と労いを込めて一般人は近寄らないのが暗黙のマナー。つまり今ここにいるのはみな今日を共に競った雅商たちである。
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