PROLOGUE-STORY

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PROLOGUE-STORY

―2023年2月28日18:30 信府市 イーストブロック 第8セクター(高級住宅街)― 第8セクター。笛吹市との市境に位置する、信府市の郊外にある高級住宅街。 メイン水路に沿うように築かれた一軒の真新しい喫茶店“スパイラルカフェ”。 この喫茶店は、地下1階から地上2階までの3階建てで、地下1階にお洒落なバー、地上1階に喫茶店、2階は事務所が入っており、外観は普通の喫茶店である。 喫茶店の入り口、フルウインドウのドアを開けると真正面にL字のカウンター席があり、入って右手には大きなグランドピアノ。 左手には丸テーブルのボックス席が窓辺に並ぶように配置付けされている。 「マスター、コーヒーもう1杯おかわり…」 一人の男性がカウンター席に寝そべり、煙草を咥えた店主の男性にコーヒーを再注文している。 店主の男性は煙草の火を消し、手早くコーヒーを今時珍しいネルドリップという手法で入れ、寝そべっている男性の傍に、それが注がれたカップを置いて口を開く。 「篤志、休みだからってここで寝そべられると困るんだが…」 どうやら篤志と呼ばれた男性は、ここで何時間も居座っているようだ。 篤志は気だるそうに顔を上げ、マスターの顔を見た後また、寝そべり始めた。 「酒浸りするよりいいだろ、俺と祐介の仲なんだし。そのくらい許せよ」 眼を瞑りながらマスターである祐介に言い返す。 祐介は大きく溜息を吐くと、“エレン、ヘルプミー”と言って店の奥に居る金髪の女性に声を掛けた。 すると店の奥・厨房から腰をくねらせ歩いて来たのは、右手にロゼッタという有名な銃を持った祐介の妻・エレンだ。 彼女は、カウンターに寝そべる篤志の頭部目掛けて、引き鉄を躊躇無く引く。 透き通った音と共に、篤志の悲鳴が店内に響き渡る。 「エレン、何すんだよ。そのロゼッタのエアガンは止めろよ。っていうか一応俺、客なんですけど?」 篤志が頭を擦りながら、エレンに文句を言う。 彼女は右手に持ったロゼッタを、西部のガンマンっぽく器用に回転させ、腰に付けているウェストポーチに素早くしまい、すかさず笑顔で言い返す。 「DA・MA・RE…、アンタここに何時間居座ってんの?邪魔なんだけど?それでもかつて“冬夜の銀狼”と呼ばれた男?情けないなぁ…」 エレンはそれだけ言うと、ウェストポーチにしまったロゼッタを取り出し、彼の頭部目掛けてもう一発発射する。
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