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「懐かしいな、かれこれもう20年位前だろ?その時の小説、今何処にあるんだ?」
篤志は先ほど差し出されたコーヒーを一口飲み、祐介に問いかけた。
「もう製本して、第3作目は書斎の本棚に置いてあるぞ。誰でも読めるようにな」
祐介は洗い物を終わらせ、後ろを向いてお茶の用意をし始める。それは見慣れた男女が此方に歩いてくるのが見えた為だ。
風雅がクッキーを食べながら、タイトルや内容を聞いてくる。
「全部で6つのストーリーから成る…」
そこへ丁度、先ほどの男女が扉を開け、店に入ってくる。
店に入ってきた男女を見て、祐介は優しく微笑んだ。
「いらっしゃい、杠葉に千夏…」
― 20年前 世界の最果て(クラウド・エンド) エデン―
広大な雲海、南極大陸の上空3000m付近にぽっかりと空いた巨大な穴・クラウドホール。
そこには上空からの、急激な下降気流によって雲一つ無い。
この穴に飛行物が侵入すれば、下界の大陸まで吹き飛ばされてしまう。
その為昔からパイロットたちは、“魔の空域”と呼び誰一人として寄り付くことは無かった。ただ一団を除いては。
エデンは、そのクラウドホールの中心付近に平然と佇む島、謂わば天空の浮島だ。
この島には太古から棲まう人々がいた。
世界を管理する組織・創天管世(ソウテンカンヨ)。
この組織は、その名の通り世界情勢や経済を含め、人々の行き過ぎた行動が無いかどうか、常に監視する役割を担っている。
人が人一人を殺すのであれば問題は無い。だがこれが大量殺戮や悪意ある環境破壊となれば話は別だ。これらの問題が速く解決するように、人々の意識などに働きかけていく。
まあ要するに、必然的に起こった事象を、偶然を装って解決するように導くのが、彼らの役目と言うものらしい。
あの日までは…。
2003年2月29日7時31分
過去にたった一団しか入ってこなかった場所に、ある時人間達が乗った巨大な飛空艇が着陸した。
久しい客人に女神は心踊らせ、その者達を歓迎する為、居城を飛び出し側近の青年と供に門へ駆けつけた。
しかし飛空艇から降り立ったのはフードを深く被り、黒いローブに包まれた女性だった。
見るからに冒険者と言う居出立ちではない。
側近の青年は彼女の邪悪でどす黒いオーラに気づき、女神の前にサッと身を乗り出した。
女性は言った。
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