PROLOGUE-STORY

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「我が名は“楽園へと誘う者”、貴女方が保有する“アカシクル”を譲り受けに来た。要望に応じて戴けない場合には、武力行使させてもらいますが、如何でしょうか?」 この言葉に漸く状況を理解した女神は、怪訝そうな表情になり口を開いた。 「いけません、あの書は“人が持つにはあまりにも重すぎる惑星の歴史”です。それが目当てならば今すぐお引き取りお願いします」 女神は言い終わるや否や、蒼天へ掌を向けた。 ここより更に上層にある雲が形を変え、上半身だけの鬼を創り出した。 その鬼は、今にも襲い掛かって来そうな形相で、魔女達へ大気を震わせる程の雄叫びを浴びせる。 雄叫びによる衝撃波とともに、女性の頭部を覆っていたフードが外れ、彼女の顔が露わになった。 その瞬間、青年は深く溜め息を吐き、目を見開いて口を開けた。 「昔から危険視していたが、やはり君だったか…」 「お久しぶり元比叡山学園生徒会長の神鍵契君。学園閉鎖式以来かしら?」 契は固唾を飲んだ。 それを見た女性は、ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべ、左手を真上に高く翳して指をパチンと鳴らした。 その瞬間、女神と契の真横を掠めるように、可視化された斬撃が飛び、居城の一部と鬼の右目付近を斬り落とした。 「任せておけ」 ドスの利いた声と共に、船内から片腕で大型バイクを軽く担いだ巨漢が姿を見せた。 巨漢はバイクを構えることなく、女神達の方へ突進してくる。 すかさず契は携えた鞘から刀を抜き、前方にしっかりと構え口を開く。 「極秘機関・創天管世の副当主である、この神鍵契(カミジョウツムギ)が相手だ」 ********************* 手を血で染める者、世を見据える者、願いを叶えようとする者、真実を探求する者。 多様な者達の情や思惑、意識や記憶が入り混じり、それらが巧みに絡み合いながら、崩壊へと進んでいく世界。 大人になった者達が青少年だった頃。彼らはどういう風に世界を見て、どんな事を思い生きてきているのだろうか? あの日、一人の青年が拾った書物が全ての始まり。 世を渡り、時代を走り、時には獣の道を歩み、全てを乗り越えて。 彼らは無事にあの場所へ還ることが出来るのだろうか? この物語はかつて、数多の世界を旅した青少年達の、遥かなる時の中で描かれた、壮大な幻想譚である。
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