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芳季は教室の床にうつ伏せになって倒れていた。
「芳季君の取材は予行練習前に終わってるのよ。取材済みの邪魔な生徒には、私のスピンアタックを喰らってもらった訳」
手を仰ぐ少女の言う事には耳を傾けず、祐介を含めた数人のクラスメイト達が芳季の元へ駆け寄り、声を掛けて彼を起こそうとするが、完全に気を失っている。
“なんて大袈裟な…”と言う少女に向かって、1人の男子生徒が立ち上がり“その横暴な取材活動を行う貴様を、今日こそ成敗してくれる。覚悟”と言って、拳を掲げ少女の元に駆け寄って行く。
しかし男子生徒の拳は少女に当たることは無かった。それどころか少女の横をすり抜け、後ろの机などに盛大に突っ込んだ。
「無理無理そんなヤワイ攻撃、北條流合気柔術の免許皆伝者である私・北條院ティアには全く届かないよ」
自慢げに語るティアに対し、2人の男が立ち上がった。
祐介ともう1人。校内で不良学生を窘めている、所謂番長のような地位に就いている男・鐡轍だ。
頭こそ悪くないが、素行が悪く万年留年生でもある。勿論今年も彼は卒業できないでいる。
そんな彼が何故ここに居るのかは全くの不明だが、彼女に太刀打ちするには彼は必要不可欠だ。
「あら良いの?轍さん?私に刃向かっちゃって、折角卒業出来るチャンスをあげたのに…」
どうやら彼らの間には何かしらの協定のようなものがあったらしい。
しかし小さく溜息を吐いた轍は、目を見開くと口を開いた。
「元よりここを卒業する気は無ぇ、そんな事より俺が勝ったら一発ヤらせろや」
欲望全開の罵声を挙げながら、拳を構えてティアの元に突っ走っていく。
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