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ティアは大きな口を開け“嫌”と言って、轍を軽く片腕だけで後ろに投げ飛ばした。
しかし轍の方もこれは予想していたのか、空中で宙返りをした後、地響きを立てながら床に無事着地した。
「に決まってるじゃん。なんで王家出身の私が、平民出の下種なテメェらに身体を渡さなきゃならない訳?アンタ達はただ私に情報を提供していれば良いんだよ。まあ有名人のスキャンダルに関する、特大のゴシップネタを提供してくれるんなら、足を舐めるくらい考えても良いわよ?」
“何故にこんなにもS的な発言なんだ?そもそもそんなネタ持っているなら、とっくに新聞社に掛け込んでいる”
祐介がそんな事を思っていると、不意に轍が布のような物を手に持ち話しかけてくる。
「おい神崎、これやるからお前も参戦しろ。今からコイツを喰い殺すぞ」
そう言って彼は、手に持った布を祐介の方に放り投げる。
布は空中で2つに分裂し、祐介の手と頭の上に落ちた。
妙にフワフワとした触感に、驚きを隠せなかった祐介は恐る恐る目を落とすと、手にしていたのは。
純白のブラジャー。その時頭の上に落ちた布がハラリと手に落ちる。それは正しく純白のショーツ。
祐介とティアの思考が完全に停止した瞬間だった。
思考が止まってから、どの位の時間が経過したのか分からなかったが、我に返った祐介は手に持った下着を、轍の方に“要らん”と言って投げ返した。
しかし下着達は思いの外飛ぶ事無く、放心状態のティアの顔面に直撃し床に落ちる。
「なっお前、裏切ったな。喜ぶと思って折角スッてやったのに…」
轍が目を丸くして言ってきたので、すかさず祐介は“おやぢじゃあるまいし、そんなんで喜ぶかっ”と言い放ってやった。
周囲を見渡せば、何やら狂喜のオーラが教室を包み込もうとしている。
それは過去に、ティアの被害に遭った者達から発せられるもので、女子も含めればざっと20人余り。
その様相に血の気が引き、自分の荷物と気絶している芳季を担いで、教室を飛び出した。
祐介が教室を飛び出したのは、クラスの生徒達がティアを襲う事に恐怖したのではない。その後の展開が恐ろしく思えたからだ。
今はまだティアの思考が停止しているから良いが、一度動き出せばどんな仕打ちが待っている事か。
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