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あれからどれほど経ったのだろうか…
先程まで聞こえた悲鳴も今はもう聞こえず、時々ゾンビどものうめき声と足音しかしなくなっていた。
「…あー!もう駄目だ、我慢できねぇ!表に出よう!」
アレックスが長い間の沈黙を破った。
「無謀過ぎるわ。あたし達の武器はこのハンドガン一丁しかないのよ」
エルザはドアに耳を当てながら静かに言った。
「そんなもん、外に出てガンショップに行きゃいくらでもあるさ!」
「ここから店に行くにはどれほどあるか分かってるよな…」
俺はアレックスにそう言った。
「…クソッ!八方塞がりか…だがこのままじゃなんの解決にもならねぇぞ!」
「いい加減にしてアレックス!あなたの言いたい事も分かるけどあたし達も分からないのよ!」
エルザがアレックスを怒鳴った。
これに驚いたのか
「…スマン……」
と言ったきり黙ってしまった。
「…なぁ、どう思う?」
「?」
俺はエルザに話しかけた。
「俺はまだ信じられないよ。この状況を…
ほんの数日前まで何事も無かったのに今じゃこれだ。医院長も、街のみんなもほんの少し前まで生きてたんだぜ」
「……」
「みんなもつい昨日まで笑ってたんだ…酒飲んで酔っ払ってた奴だっていたし、たかが骨折なのにここに駆け込むガキもいたんだ…だが皆もぅこの世にはいないんだ…」
「……」
エルザは黙って聞いていた。
俺は大きな溜め息をもらした。
目に自然と涙が溢れてきた…病院の先輩や街のみんなの顔が見える。
「…そうね、たしかに色んな事が立て続けに起きたわね…」
エルザが喋り始めた。
「だから、だからみんなの分も生きなきゃ!」
そう言うと俺の顔を持ち上げ、涙を拭いてくれた。
「必ず生き残る方法はあるわ! だから泣かないで…それにあなたが泣いたら泣けないじゃない」
エルザは優しく笑いながらそう言った。
「…ん?待てよ!あるぞ!安全に病院を抜け出す方法が!」
突如アレックスが喋り出した。
「安全に…どうやって?」
「下水道だよ!あそこならゾンビも入ってこないし、この階にある!」
「…行きましょ!そこへ」
「やっと希望が見えてきたぜ!」
こうして俺達はひとつなぎの希望を持ちながら部屋をあとにし、下水道に向かうのだった
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