真実…脱出

4/4
2608人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
あれからどれほど経ったのだろうか… 先程まで聞こえた悲鳴も今はもう聞こえず、時々ゾンビどものうめき声と足音しかしなくなっていた。 「…あー!もう駄目だ、我慢できねぇ!表に出よう!」 アレックスが長い間の沈黙を破った。 「無謀過ぎるわ。あたし達の武器はこのハンドガン一丁しかないのよ」 エルザはドアに耳を当てながら静かに言った。 「そんなもん、外に出てガンショップに行きゃいくらでもあるさ!」 「ここから店に行くにはどれほどあるか分かってるよな…」 俺はアレックスにそう言った。 「…クソッ!八方塞がりか…だがこのままじゃなんの解決にもならねぇぞ!」 「いい加減にしてアレックス!あなたの言いたい事も分かるけどあたし達も分からないのよ!」 エルザがアレックスを怒鳴った。 これに驚いたのか 「…スマン……」 と言ったきり黙ってしまった。 「…なぁ、どう思う?」 「?」 俺はエルザに話しかけた。 「俺はまだ信じられないよ。この状況を… ほんの数日前まで何事も無かったのに今じゃこれだ。医院長も、街のみんなもほんの少し前まで生きてたんだぜ」 「……」 「みんなもつい昨日まで笑ってたんだ…酒飲んで酔っ払ってた奴だっていたし、たかが骨折なのにここに駆け込むガキもいたんだ…だが皆もぅこの世にはいないんだ…」 「……」 エルザは黙って聞いていた。 俺は大きな溜め息をもらした。 目に自然と涙が溢れてきた…病院の先輩や街のみんなの顔が見える。 「…そうね、たしかに色んな事が立て続けに起きたわね…」 エルザが喋り始めた。 「だから、だからみんなの分も生きなきゃ!」 そう言うと俺の顔を持ち上げ、涙を拭いてくれた。 「必ず生き残る方法はあるわ! だから泣かないで…それにあなたが泣いたら泣けないじゃない」 エルザは優しく笑いながらそう言った。 「…ん?待てよ!あるぞ!安全に病院を抜け出す方法が!」 突如アレックスが喋り出した。 「安全に…どうやって?」 「下水道だよ!あそこならゾンビも入ってこないし、この階にある!」 「…行きましょ!そこへ」 「やっと希望が見えてきたぜ!」 こうして俺達はひとつなぎの希望を持ちながら部屋をあとにし、下水道に向かうのだった
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!