咆哮

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扉には鍵はかかっていなかった。 俺達は急いでその場を離れた。 「…ハァ、ハァ…さすがにもう追って来ないだろ …」 息を切らせながら俺は言った。 あの後俺達は必死に走って逃げた。 おかげであのワニは追って来なくなったが、自分達の今いる場所が分からなくなっていた。 「…ハァ、マジで冗談キツイぜ…ハァ」 「てかありゃワニか?ゆうに10m越えてたぞ!」 「下水の化学物質のせいであんな大きさになったのかしら?…」 「知るかよ!…ハァ、とにかく上に上がろう。こんな所に長くいたく無いからな…」 そう言うとアレックスは側にあったマンホールを持ち上げた。 「…くっ!あれ?開かないぞ!?」 「ちょっ!嘘でしょ?」 「恐らく上に車か何かが乗ってるんだな」 「どうする?」 「…仕方ない、他の場所を捜すしかないだろ」 「またアイツが襲って来ないかしら?」 「その前に脱出しないとな…」 アレックスはマンホールを押すのを諦め梯子から降りてきた。 遠くでアイツの咆哮が聞こえて来た… 「…急ご!」 俺達は声のした方向の逆に向かって歩き出した。 「…もう街から出れたかしら?」 「恐らくな…だが、油断は禁物だぞ」 あれからどれ程歩いただろうか…途中見つけたマンホールは全て駄目だった。 あのワニの咆哮もいつの間にか聞こえなくなっていた。 「よし、次はこのマンホールだ…」 アレックスは梯子をのぼると力一杯マンホールを押した。 その時! ドカーーン!! 俺らの側の壁が轟音と共に吹き飛んだ。 アイツだ…アイツはあのあと俺達をしつこくまだ捜していたのだ。 「…!!急いでアレックス!」 「…まて…もう少しで開くぅ~」 マンホールに力を入れながら言った。 「クッ!!カルロス。時間稼ぎするわよ!」 エルザは銃を両手に構えながら俺に言った。 ドン!ドン!ドン!ドン! 二丁の銃は鰐に向かって火を吹いた。 ヤツの体からドポドポとドス黒い血が吹き出た。 「…まだなの!?」 「あと、ちょっとだ!」 アレックスの顔が真っ赤になっていた。 鰐は勢いをつけて俺に突進してきた。 「ぐわっっ…!!」 喉の奥に熱いものを感じた。
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