千瀬

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 千瀬は学校を歩き回ったが、特に描きたいという気持ちが生まれるものは無かった。グラウンドや校舎など、風景画を描いても仕方がない。他に出展する人が書いている可能性が大いにあり得るからだ。それに、ありきたりすぎて観る人の印象に残らないだろう。どうせ出すのであれば、印象に残るような絵を描きたいというのが千瀬の気持ちだった。  悩んだ挙句、千瀬はある人物に相談することにした。  こんな千瀬でも葛西幸恵という、中学校からの友達はいる。  中学校の入学式の日、幸恵は隣の席で、千瀬に話しかけてきてくれた。積極的に話しかけてきてくれた人を、千瀬は拒まない。すぐに打ち解けた。もし、この学校に幸恵がいたら友達作りはもっと楽にできたのではないか、と千瀬は思っている。せめて、幸恵ではなくても知り合いが一人でもいる高校に進学するべきだったかもしれない。
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