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千瀬は幸恵に電話し、単刀直入に事情を話した。
「そっか、千瀬は絵が上手だからなんでもいいんじゃないかな。風景画でもみんな驚くと思うよ」
「それじゃちょっと、インパクトがある絵を描きたいの」
「その気持ちはわかるけどさ、なんていうか、インパクトがどうのこうのっていうキャラじゃないじゃん? 千瀬って。どちらかと言うと王道ところを走ってるっていうか」
「幸恵って、私のことをそういう感じで見てたの」
「悪い意味じゃないんだよ、それが千瀬のいいところでもあるんだしさ。そうだ、私ねいい事思いついたよ」
「何?」
「インパクトのある絵でしょ?」
「うん」
「クラスみんなの似顔絵を、一枚の紙に書くっていうのはどう?」
「似顔絵? 私人の顔を描くのそんなに得意じゃないけど」
「別にそっくりとかじゃなくていいんだよ。千瀬って結構人のこと観察してるし、自分が思ったその人の印象を、似顔絵風に描いてみればいいんじゃないかな」
確かに、幸恵のアイディアは素晴らしい。インパクトもあるし、『似顔絵風』であるなら、忠実さを求められない。しかし、千瀬は自信がなかった。
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