千瀬

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 「西田さん同じクラスだよね? 同じクラスなのに話したこともなかった。私、橋野奈々。奈々でいいから。で、私の隣にいるのが白鳥優衣ね」  優衣は「どうも」と言って会釈をした。そのあとに「優衣でいいから」と付け足した。恐らく、千瀬が数か月前に訳も分からず話しかけたことを、優衣は覚えていないのだろう。  「西田さんは……千瀬でいいかな?」  「うん」  千瀬は嬉しかった。時間は掛かったが、高校での友達が初めてできたような気がした。  それからクラスに馴染むまで、そう時間は掛からなかった。優衣と奈々は、クラスはもちろん、他のクラスの人まで顔が広い。二人の近くにいると、千瀬まで知り合いの数が増えた。  千瀬が心配していたのは、あの時三年一組の教室で少し話した程度で、それ以降は関わり合いが無くなってしまうことだった。千瀬にとっては友達ができたという瞬間であっても、奈々や優衣からするとただの社交辞令だったというオチは十分にありえた。結果的に心配には及ばなかったが。
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