千瀬

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 次の日の朝、教室に行くと「おはよう」と入口付近で後ろから声をかけられた。滅多にない出来事だったためビックリしながら後ろを向くと、優衣が立っていた。優衣はニコッと笑うともう一度「おはよう」と言った。  「おはよう」  私はやっとの思いであいさつを返すと、優衣はもう一度ニコッと笑い、千瀬をかわして教室の中に入った。  千瀬は嬉しさのあまり少しにやけそうになったが、必死に堪えて教室の中に入った。  席に付こうとすると、右斜め前方向から「千瀬!」と声が聞こえた。千瀬は顔を上げて声がした方を見た。  「おはよう」  千瀬を呼んだのは奈々だった。ちょうど優衣と話していたようだ。  「おはよう」  奈々に挨拶を返すと、奈々はニコッと笑った。そして、優衣との会話に戻った。  千瀬の顔から自然と笑顔がこぼれた。一回話しただけの関係ではなく、これはもう友達という関係である。単に気を使っているだけと言う可能性もあるが、積み重ねていけば友達である。今思えば、幸恵との関係も、最初はこんな感じだった気がする。  それから優衣と奈々と一緒に買い物に行ったり、カラオケに行ったり、一回だけあるロックバンドのライブにも行った。
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