千瀬

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 五月になると、ある程度クラスの中でも仲がいい人同士で、いくつかのグループを作っていた。千瀬はその中のどれかに入りたいと思いつつも、内心、もう無理だから諦めようという気持ちになっていた。  学校生活において、気軽に話せる友達がいるかどうかというのは、大きな問題である。友達が多いから良いとか、少ないからダメとか、そういう次元ではない。気軽に話せる友達がいれば、テスト前にノートの貸し借りをしたり、勉強を教えてもらえたり、悩みを相談したりできる。なにより、一人でいるよりも楽しい。  千瀬はどうにかして、一人くらいは友達を作ろうと、一度だけ勇気を出して一人のクラスメイトに声をかけたことがある。  「あの」  後ろから彼女に声をかけた。  「何?」  彼女が振り向くと、彼女の髪の毛から心地よい香りが漂ってきた。
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