うたかた

千瀬

　彼女はクラスの中心人物の一人である、白鳥優衣である。肩を越すくらいの長いキレイな髪が特徴で、顔立ちも、他のクラスメイトと比べ物にならないくらい整っている。一六０センチの高い身長に、モデルのような体型。優衣はすでに学校中で有名になっていた。

　千瀬はすぐに後悔した。恐れ多くて優衣とは喋れるはずがない。後ろ姿しか見ないで話しかけるべきではなかった。

　優衣は様子を窺うように千瀬を見た。千瀬は緊張して何も話せないでいた。

　「どうしたの？」

　しびれを切らしたのか、優衣が尋ねてきた。

　「えっと、その……」

　千瀬は何か話題を探した。しかし、優衣に対してどんな話題を振って、どんなことを話せば良いのか見当もつかなかった。

　「その……なんでもないです！　すいません」

　千瀬は諦めてそう言った。

　「あっ、そう」

　優衣は困ったように言った。そして「変なの」と言いながら千瀬に背を向け、その場を立ち去った。