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このログというのは言わば行動履歴であり、店舗の扉やゲートを潜る事で履歴が警察内のメインパーソナルサーバーに蓄積される仕組みだ。
この画期的な技術は、凶悪な犯罪者から街や民を守り、治安を維持するための秘策らしい、無論プライバシーは皆無だが。
まぁ要するに降りた列車には乗れないというのが、この道内の駅の常識である。
因みに、列車から降車せずに、折り返しの車内に居座り続けても、車掌が見回って残っている乗客たちのログを勝手に作ってしまう為、どちらにせよこの常識からは逃れる事は出来ないという訳だ。
祐介たちが改札口前まで来ると、恐らくストレートショットに失敗したのだろう、高校生らしい学生服を纏った男の子が数名の駅員に連れられ事務室に入っていくのが見えた。
「ちょっと見てよ、プラ網かと思ってたら、鎖網だよ」
中央改札口は様々な路線に乗るために大勢の人々でごった返していた。
幅30mにも及ぶ改札口の頭上には、時刻表やニュース番組などが映った640型の超巨大な画面・Big Screenがあり、そのスクリーンと改札の間には僅かな隙間があるはずだが、今日は違った。
“ふっ、まだ大丈夫”と、祐介は春樹にそっと腰にある物を見せると、彼は小さく頷き、“これなら大丈夫だな”と言った。
「んじゃあ、いつも通りの仲島百貨店の6階の本屋で待ち合わせって事でどうだ?」
そう言うと祐介はマフラーで顔半分を覆い、後ろできつく縛った。
「ああ、了解した。まあ精々死なないように」
春樹の捨て台詞はいつも通りだったが、妃由は心配そうに祐介の方へ、ホルダーに入ったエアガンをこっそり渡してくる。
「これ念の為渡しておくね、10㎜軽鉛弾が発射できる、50口径セミオートマチックリボルバーだよ。装弾数は6発しか無いから、非常時に使って」
この銃は先程、列車内で彼女が春樹に向けて発砲した物だ。
だが、彼女が使用後に装弾していた様子が無い為、春樹に1発、男子学生に1発撃っているから、恐らく残りは4発程だろう。
妃由に礼を言い、銃をウエストバッグにしまう。
祐介は壁に寄り掛かりながら、改札口を通り過ぎる春樹達を見送った。彼らが視界から消えた事を確認して、制服のポケットから煙玉を5個取り出し、全てにライターで火をつけ、改札口に届くように投げた。
5個のうち3個が駅員のいるところに落ち、残りの2個は改札口を通り過ぎてしまった。
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