~第三章 ダンの喫茶店~

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キャズには冬が訪れていた。 普段はにぎやかな城下町も、しんと静まり返っている。 外は雪が積もっていて、店はどこも開けていなかった。 キャズの冬はどこよりも寒い。大抵の人は家にこもって、暖かい暖炉の前にじーっとしているのだった。 そんな雪の中を、一人の若い男が歩いていた。 背はスラッと高く、身体には程良い筋肉がついていて、鍛えているのが分かる。薄汚れたマントの上から、剣と荷物を背負っていた。地元の人間ではないようで、かなり薄着だ。 30分程前から、また雪がしんしんと降り始めていて、男の頭には粉雪が積もり始めていた。 男は適当に角を右に曲がったところで、小さな喫茶店の看板を見つけた。 ドアノブには「open」の文字。 ずっと休める場所を探してさまよっていた男は、ニカッと笑うと、急いで中に入っていった。
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