第1章

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 私は高校でもなぜかイジメにあった。  私は何もしていないのに。普通なのに。  どうして普通じゃないことを演出する『七味ちゃん』のほうがみんなに慕われるのだろう。  理不尽だ。  みんな、頭おかしいんじゃないの。  ビルの谷間から覗く夕陽が目に染みる。  充満する排気ガスのにおいに、だんだん胸が悪くなってくる。  歩道橋の下を次々と行き交う車を見下ろし、私はぐっと両のこぶしを握り込んだ。  大きく息を吐き出し、欄干に手をかける。  頭のおかしい人たちばかりの世界で生きていくのがバカバカしくてならなかった。  無駄に疲れるだけだ。 「ユウちゃん!」  欄干から身を乗り出したそのとき、誰かがいきなり後ろから抱きついてきた。  いや、〈誰か〉なんて思わせぶりに言う必要はない。  私のことを『ユウちゃん』と呼ぶのは、今はもう彼女しかいないのだから。
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