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私はスプーンを手にしたまま固まった。
目の前に座る『七味ちゃん』は、七味をかけないままパフェを食べていた。
なんだ。
やっぱり不思議ちゃんを演じるための演出だったのか。
「普通の味のものを食べると気分が悪くなるんじゃなかったの」
皮肉をこめて言ってやると、彼女はまた口元だけで笑った。
「うん……。前はね、ずっとそうだったの。昔のこと思い出して、吐き気がして。何も食べられない時期もあったんだけど……。でも、生きるためには食べなきゃいけないでしょ? それで、あるとき気づいたの。味が分からなければ大丈夫だって」
吐き気がするような昔のこととは何なのか。
尋ねようとして、私は口をつぐんだ。
彼女は孤児院にいたことも、その前のことも、これまでいっさい誰にも語ることがなかった。
もしかしてそれは、イジメの対象にされかねないからではなく、別の理由があったからなのだろうか。
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