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「食べなきゃいけないって言うけど、生きないっていう選択肢はなかったの?」
その選択肢があれば、無理に食べる必要などないはずだ。
彼女はパフェの上にのっていたチェリーを口に入れ、目を細めた。
「だって、生きるために生まれてきたんでしょ?」
彼女の瞳はまっすぐで、力強かった。
私は直視していられなくて、融けはじめているパフェのてっぺんをスプーンでつついた。
──生きるために。
おかしいのは私のほうだったのだろうか。
しんどいのなら死ねばいい。無理に生きることもない。
そう思っていた私の頭のほうがおかしかったのだろうか。
「ねえ……。私って、イヤなやつだね」
「どうして?」
「ミズキのこと、ずっと馬鹿にしてた。嫌なやつだと思ってた」
哀れなのは、私のほうだった。
彼女のように現状を変える努力をしようともせずに、ただ流されて。
それでもプライドだけは捨てきれずに、他人のことを見下して。
なんてつまらない人間なのだろう。
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