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「此処は、海であって海じゃなかったんだね。
僕も謝らなくちゃいけない。
君をいっぱい傷つけた。
ごめんね。」
温かい雫で肩がそっと濡れてゆく。
僕は、僕の中にいたんだ。
・
海の中に。
『海、ありがとう。
思い出してくれて。
僕らは、胸の傷みで2つに分かれて、心を閉ざしてしまった。
ずっと、ずっと辛かった。
君を、自分を、守れなかったことが。』
抱き寄せる腕が強くなる。
もう二度と、離さないように。離れないように。
もう、大丈夫。
わかるから。
自分の名前がわかるから。
水面に浮かぶ夜の月が僕らを照らしていた。
「僕らは、やっと泣けたんだね。」
今まで堪えていた涙が、海の滴より大きな雫となって、瞳からこぼれ落ちた。
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