片恋未満

1

合った目が少し開かれた気がした。

トン トン トン…

ゆっくり階段を登ってくる足音。

慌てて顔をそっぽに向けて隠した。
どうかそのまま通りすぎて…

トン…

私が座る段で足音が止まる。

「どうした？」

思いの他、優しい声に一気に恥ずかしさが募った。

泣き顔を見られた羞恥心とまさか先生が来ると思っていなかった私はパニックになる。

「ああ、あの！これはなんでもなくて、なんでもないので、もう行って下さい！」

腕で顔を隠しながら必死にそう言うと先生はその様子を察したのか

「なんかあったら言えよ」

そう言って私がいる段を通り過ぎプレハブの中に入っていった。

何も…

…聞かないでくれた。

私はホッと息をつく。
でも今の驚きで涙が引っ込んでしまった。

3人が戻ってくるまでに元に戻ってなくちゃ…。

それから暫くしてトイレへ行くと、鏡で顔を確認しすぐに練習に戻った。