プロローグ

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また会えるかどうかなんて約束もないのに分からない。 でも「さよなら」とだけは言いたくなくて。 「さよなら」以外の言葉が見つからなくて、何も言葉にならないのにすぐには離れたくなくて、会話に混ざるわけでもなく、その様子を見ているわけでもなく、背中を向けてじっとその声に聴き入る。 どんなに願っても時は止まることなく進んでいく。 あれだけ来ないでほしいと願った今日ももちろん同じようにやってきて。 …もう、行こう。 往生際悪く動けずにいた私は駐輪場へと一歩を踏み出した。 「あ、神林!」 まさかと思い一瞬迷ってから後ろを振り返った。 「またな!」 霞んで見えていた桜が一気に鮮明になる。 予想していなかった一言に胸がいっぱいになった。 泣かないって決めたのに。 返事は出来なかった。 何かがこぼれてしまう前に前に向き直り私は走り出した。 桜の中のあの笑顔が今でも忘れられない。
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