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「なによ!知香!」
遥加がジロリと睨んでみせてもまったく動じていない様子で更に笑い声が大きくなる。
知香の緩くパーマがかかった茶色の髪が動きに合わせて肩で細かに揺れる。
ひぃひぃ言っている知香の様子を見れば長年の付き合いである私にもだいたいのことが分かってはくるのだ。
「なるほどね、運命の出会いではなかったわけだ」
先ほど中腰で立ち上がった遥加はむっつりと膨れ面で座る。
ようやく笑いを収めた知香が目に涙を浮かべながらも遥加にごめんごめんと合掌してみせた。
「まぁ、運命の再会が待ってるわけだし、いいじゃない」
「そうよね!」
たちまち機嫌を直してそう息巻くところが遥加らしい。
「中学の同窓会かぁ~。私、実は楽しみだったりするんだよね」
「なーんだ、知香だって運命の再会楽しみにしてるんじゃない」
「違うよ!そうじゃなくてさぁ!同窓会なんて初めてじゃない?それに、皆来るんでしょ?皆に会えるのが楽しみなの!」
「それ、分かるかも」
「でしょでしょ!成人式の後だし、きっと集まりもいいよ!」
私に同意されて知香は声を弾ませた。
「そうねー、だから運命の再会もきっとあるわよ」
2人の話はいつの間にか違う話題にすり替わっている。
話題がころころ変わるのはいつものことだ。
同窓会か。
あの人も来るのかな。
会えるかな……でも会うのちょっと怖い気もする。
もし来るなら高校の時に会って以来かな。
会えるかな、会いたいな。
一番聞きたいことが聞けないでいる私。
2人が楽しそうに話す様子をぼんやりと眺めながら私はあの頃を思い出していた。
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