性癖、それは正義であり悪

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 千里の選ぶ服のセンスは決して悪いわけではなく、もはや良いの部類に入るレベルだ。 自分の体型、顔立ちその他諸々を考えて自分に似合う服を選ぶ。 簡単な事かもしれないが、そこには普通偏見なりナルシズム要素が入るため、少しでもかっこよくなりたい綺麗になりたい、あの人に近づきたいあの人みたいになりたいという願望によってセンスがゆがむことも多々ある。 そんな中で、そういう欲に流されず、己の見た目に似合うものを選べるというのはすごいことなんだと実感する。 そしてその実感の矛先が身近の人物というのだからなおさら驚きも隠せない。 「よくそうやってきちんと選べるな……」 「春さんだって、ちゃんと服選んでるじゃないですか」 「そうだね、春さんの服のチョイスも中々美しいセンスだと思いますよ」 「そうか、そう言われると照れるな」 「照れるって真顔で言っても照れてるように見えませんね」 「照れてないからな」 「自分ももっと春さんの服のバリエーションを見てみたいですね」  何故お前が食いつく? という疑問は出てきたが、ふっと消えた。 そうだ、こいつは私に興味があるという千里と同じ変態なのだ。 まず出会ってすぐに性交渉を求めてくるあたり、変態の域を超えていると言っても過言にならなそうに思えてくる。 「春さんは服買わないんですか?」 「余裕がないし、まだ着られる服はたくさんある。 今のところは必要ないな」 「そうですか……。 春さんのセンスも見てみたかったのですが」 「基本、普通の女の子と違って服にあまり興味を示さないものでね。 アクセサリ系統も同じで、たまに男に生まれた方が楽だったんじゃないかとか思うね」 「無いものねだり、というわけですが」  そんなところだろうな。 女性の身体がいやだと言うやつは男性の身体を求めるし、男性の性欲と兼ね合わせて女性の身体が欲しいと言うやつもいるし、性同一性障害の人はなおさらか。 私はぼやく程度に欲しいというだけで、別にこの身体がいやで仕方がないというわけではない。 なのでこれからもこの身体で生きていくつもりでいる。 そんな私を妻にしようと言う変わったやつがいるかどうかだが、いやいるか。 ここに二人くらい。 いやいや、深頭は分からないから一人か。 千里がいるな。
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