波風立たぬ波乱の文様

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 夢を見た。 なんとも目覚めが悪くなる夢過ぎて内容まで覚えたくないくらいうっとおしい夢。 深頭のことなど軽く考えるくらいにまで嫌なものだった。 しかしそのおかげでいつもより三十分くらい早く起きれたので、朝食と昼食の弁当を並行して作る。 目覚めは悪いが眠気が抜けていないわけではないので意外と意識ははっきりしていて、包丁で指を切るようなヘマはしないだろうという感じである。 「春さんおはようございます! おきてますか~?」 「意外と朝は早いんだ。 もうとっくに起きてるが、まだ寝ていたい」 「寝たら駄目ですよ~。 というか、玄関開けてくれないんですね」 「朝食を作っているからな、後弁当も」 「そういえば春さん弁当派でしたっけ。 ボクも弁当にしようかな……」  一緒に弁当を食べたいとか言い出すんだろうな。 今までの平和に昼食を取れていた時間が無くなりそうな予感が否めない。 まあにぎやかなのはいいことだとは思うが、こいつはろくでもないことをして来そうなので、あまりお勧めはできないぞ。  遠まわしにさっき玄関開けろと言っていたな。 しょうがない、あけてやるか。 そう思って玄関を開けると、その先には制服に着替えた千里が立っていた。 着替えるの早いな。 まだ六時半だぞ。 「わお、エプロン姿の春さんも新鮮で中々いいですね」 「褒められているのか、妄想の糧にされているのか迷うところだから今唐突に玄関を閉めたくなったな」 「もちろん褒めているんですよ? かっこいい恰好ばかりの春さんが可愛いものを身に着けているのは新鮮で見ていてうれしくなりますからね」 「そらどうも」  そういえば、こいつは朝食を食べ終わったのだろうか。 いや、多分食べ終わってないな。 いつも朝食はどうしているのだろうか。 考えていてもしかたないか。 私は私できちんと朝食を取らねばならないから、調理に戻る。 と言っても、もう終わりに近いから特にどうこうすることもないんだがな、盛り付けくらいだ。 しかもそこまで盛り付けにこだわりがないので、適当で済ませている。 「お前、朝食は?」 「もう食べました」 「そうか、なら少し自分の部屋で待っていろ。 私は今から朝食を食べるんだ」 「見ていてはだめですか?」 「生憎そんな趣味はない」
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