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いや、考えてみたら運転手さんに直接聞けばいいのではないかという単純な思考に行きついた。 そうだ。 たのまれたのがこの人の上の人ならこの人が誰に頼まれたかくらいわかるはずである。 いいから行って来いと言われている場合は別だが。
「すみません」
「はい、なんでしょう?」
「これって母さん……片倉千尋が呼んだものなのでしょうか?」
「いえ、これは深頭家の所有物ですので、おそらく凛徳様から仰せつかったものかと思われます」
この人自身上からの命令らしきことで動いているのでおそらくと言う発言をしたのだろうが、深頭家の物ならばそうなのだろう。
と、そうこうしているうちに美咲の家に着いた。 美咲はここで降りて帰宅する、で間違ってないよな? さすがに私のところまで来るとは言わないだろう。 たまにそういうことするが。
「じゃあここで、また明日、みんなにこの話言いまわるわ」
「笑いながら言うことじゃないけどな」
「これは秘密にしておいた方がいいんじゃ……」
「してもどうせばれるわよ。 多分深頭君が言いふらすんじゃなかな。 理由は想像つくけど」
「理由が想像つく? なぜわかるんだ。 私ですら検討もつかないのに」
「春はそういうとこ疎いからしかたないわ。 まあそういうことだから。 じゃあね」
楽しそうに降りて家に入っていった。 理由? 検討つかないな。 まあ、言ってもいいと言ったのは私なのだから仕方ないか。 そして車は私たちの住むアパートに向けて走り出す。 これで帰れると安心すると不思議と眠くなってくる。 色々あったからな。 深頭家のことに限っているが。
「春さん、疲れているなら寝てても良いですよ?」
「お前の横で寝ていたら何されるかわからないからやめておくよ」
「信用されてないですね」
「冗談だ。 少し眠ることにするよ」
「じゃあおやすみなさい」
「あぁ」
千里の声を聞いてそのまま瞼を閉じたのは覚えているが、目を開けた時は既にアパートに着いていた。 千里に促されて寝ぼけ眼のまま車を降りる。 そうだ礼を忘れていた。 そう思って振り返った時にはすでに車のくの文字もなかった。 しまったな……、そういうところが抜けている気がする。
「大丈夫ですよ。 お礼は言いましたから、春さんが起きる前に」
「そうか、すまなかったな」
そう言って部屋に戻る。 次の日、予定通りの結果。
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