楽しかったとは、「た」と付く時点で過去になる

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 そういえば、簡単な荷物しか持ってこなかったが、もし泊まりで遊ぶことを考えているならこれはやばいことかもしれない。 着替えを持ってきていない時点でやばいのに深頭が手ぶらでいいと言う時点であいつが着替えを用意していると言うことになるからもしかしたらあいつの好みの服を着なければいけないと言うことにもなりかねないのが怖い。 さて、どうしたものか。 いや、もしかしたら私の好みに合わせてくれると言う可能性もあり、でもそれも不安にしかならないので個人的には行きたくなくなってきた。 「着きました。 どうぞ、おそらく光が待っているはずです」 「思ってたんですが、なぜ呼び捨てなんですか?」 「従う人と言ってもあなたにとっては相手の会社の人のようなものですから敬称を外す方がいいかと思いまして」 「そうですか。 それは納得できますね」 「そういうことです。 では、楽しんできてくださいませ」  一礼して、車を降りる。 そこで今まで気づかなかったのがおかしかったことを考えながら改札近くまで歩く。 深頭のことだ、なぜ私の携帯の番号を知っていたのだろうか。 千里には仕方なく教えているので知っているし、美咲は友人なので当たり前のように教えたし、他にも関わりがあるから番号を教えているのだ。 なぜあいつが知っているのか。 もしかしたら母さんが教えた可能性もあるのか。 とりあえず合流したら聞くしかないか。  改札前には、それなりの格好をした深頭と、毎度の如く女装をしている千里がいた。 美咲は……? あ、来た。 「はよざいまー!」 「おはようございます高橋さん」 「美咲さんおはよー!」 「おう」 「ちーちゃん今日も可愛いね! というか、深頭君かっこいいね……、なぜあたしの許嫁になってくれなかったのか」 「親の決断なので仕方のないことです」  挨拶を済ませたところで、深頭の指示に従って切符を買って電車に乗る。 電車が進み始めて忘れていたことに気づく。 電話番号のこと聞いていない。 「おい深頭」 「なんでしょう?」 「なぜ私の携帯電話の番号を知っていた?」 「前のファミレスでの件で。 許嫁なのだから互いの連絡先くらい知っていてもおかしくないんじゃないとのことです」 「私はお前の番号知らないけどな」 「では履歴を登録しておいてもらえるとうれしいです」 「それがあったな」  携帯を取り出し登録。
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