楽しかったとは、「た」と付く時点で過去になる

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「凄いな……」 「流石金持ち!」 「こんなところに泊まれるんですね……凄いです」 「ありがとうございます」  前のように車はすぐにどこかに行ってしまった。 おそらく戻ったのだろう。 電車に乗った分も帰らないといけないと考えると、お疲れ様の一言が出てくる。  促されて別荘に入ると、そこはだだっ広い空間が広がっていた。 本当に広いなこの建物。 これで別荘なのなら本館はもっと大きいのだろう。 前に行ったが母さんに促されるままに行ったからたいして全体を見ていないわけで、しかも部屋も客間にしか行っていないので全体像もわからない。 「各自の部屋もございます。 春さんには大きめの部屋をご用意して、衣服も用意してありますので。 大きいと言ってもクローゼットがあるくらいですけどね」 「その配慮がありがたいな。 最初はただの変態だと思っていたが思ったよりいいやつなのかもしれないな」 「ボクは最初からわかってましたけどね」 「ちーちゃんそれ嘘だ~」  本当に他愛もない話だなと思いながら聞いてたが、深頭はそれをスルーして皆を部屋に案内する。 皆二階に部屋を割り当てられて、階段近い方から深頭、千里、私、美咲の順になった。 部屋に入ってみると、本当にクローゼットが大きく存在していて、その部屋を覗くと私の趣味を知っているかのような衣服が並んでいた。 グッジョブ深頭。 と思っていると、内線らしき電話が鳴る。 おそらく深頭だろう。  「皆さん部屋の確認はすみましたか?。 済んだなら水着に着替えてリビングから行けるテラスに集合していただけるとうれしいです」 「これは部屋すべてにつながっているのか?」 「そうみたいね」 「問題なく聞こえます」 「では先ほど言った通りお願いします。 リビングは階段を下りて右に行った突き当りの扉を開けた先ですので。 後春さんの水着はクローゼットにいくらか用意してあるのでその中から好きなものを選んでください」 「わかった」  内線が全体につながっていると言うのは便利だな。 そう思いながらクローゼットにある水着を確認する。 何と膨大な量だろうかと言わんばかりの数だった。 さて、さっさと選んで着替えてリビングに向かう。 ……皆は水着を持ってきていたのだろうか?
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