楽しかったとは、「た」と付く時点で過去になる

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 それからは午前中と同じように海で遊んだり砂浜で遊んだりして時間を潰すように消費していった。 私も私でパラソルの下で涼んでいたりしたが、気分転換に端っこまで行ってみることにした。 「結構広いもんだな」  そう思いうろうろしていると、大きな洞窟を見つけた。 これはどこにつながっているのだろうか。 先があるのか中で止まっているのかわからないし、一人で行く勇気はないわけではないがどこか道に出てしまったら戻ってくるのが手間なので行かないことにする。 その時だ、洞窟の方から足音が聞こえてくる。 やはりこれはどこかにつながっている。 そう確信し、深頭に言いに行きたかったのだが。 「へえ、これ海につながってたんだ」 「面白いじゃん。 今度女連れて来ようぜ」  面倒極まりない人種の人間らしき二人組が洞窟から現れた。 幸福にも、物陰があったので、そこに隠れて様子を見ることにする。 その二人は周りを見ながら散策しているようだったので、その間に皆のところに戻る隙をうかがう。 このタイミングだと言うところがあったので、足音を立てないように戻る。  時間は掛かったが、ようやく到達できたので、報告を。 「深頭」 「はい、なんでしょう?」 「この先に洞窟があったんだが、そこがどこかにつながっているらしくて、人が入ってきていたぞ。 プライベートビーチならふさいでおいた方がいいのではないか?」 「そうですね。 少し見に行きましょうか」  深頭が洞窟の方に行くので、存在を伝えた張本人としてついていく。 そこにはまだ二人組がいた。 さっさと帰れよ、ここ私有地だぞ、そう言いたくなる衝動は抑えた。 水着は好きではないので、地味な色と言えどビキニは他人に見せれるほどの勇気はない。 「すみませんが、ここは私有地なのでお帰りいただけますでしょうか?」 「私有地?」 「あんたの土地か?」 「そうなりますね」 「金持ちってやつか」 「しょうがねえ。 帰りますか」 「そうだな。 邪魔してわるかったな。 表の道からつながってたから看板か通れないような工夫しといてくれよ?」 「分かりました。 今日は申し訳なかったです」  案外物わかりいい二人だったので、あっさり帰ってくれた。 問題にならなくてよかった。 
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