必要より不必要を迫られる状態もあったりする

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「何もなかったと言えばなかったんだがな」 「……? どういうことですか?」  過去にさかのぼらなければならないが、こいつの欲に押し負けたと言う結果なのだろう。  昔、私にも人並みに好きな人がいた。 その人は優しくておおらかですべてを包み込んでくれそうな人だった。 思ったように事は進んでくれて、付き合うわけではないが仲良くなっていって。 ある日のことである。 今日も一緒に帰ろうと誘った時、そこには物思いにふけた彼がいた。 事情を聞くと何かに焦っていると言う話。 どうにか解決できないかと思っていると、彼はトチ狂ったかのように私を押し倒した、キスまでつけて。 最初の方は良くわからなかったが、状況を把握できて来た時、とりあえず私は混乱した。 状況を把握して混乱するのも変わっているとは思うが、それが実際あったことなのだ。 こういう関係を願っていたのかと聞かれたが、自分の中でそれじゃないと言う感情が湧いてきた。 仲のいい普通の友人のような関係でいたかったのだ。 それがなぜか崩された。 それにショックを受けたのも正直なところだが、一部でこういう関係を願っていたのかもしれない自分に自己嫌悪した。 そして彼が怖くなり、逃げた。  とまあその出来事で男性という性別の人間が少し怖くなったと言う話なだけだ。 特に襲われたとか、貞操を奪われたと言う話ではない。 千里の過去に比べたら軽いものだが、一応女性なのでそういうところからすると押し倒されるだけでもそれなりの恐怖はあるのだ。 「そういうところだ」 「お互い重い過去もってますね。 襲われ系ですけど」 「だが、どういうわけかお前と深頭は平気なんだよな。 お前の場合は理由がわかる気がするけど」 「今まで嫌っていたこの顔出で立ちが少し良かったと思った瞬間ですね」 「普通自分の身体は好くものだがな」  と言いつつ私自身もこの出で立ちは好きではない。 女性らしからぬ高身長に皆が見る豊満な胸。 いい意味悪い意味関係なく不格好なのだ。 違和感の塊と言っても過言ではない。 えり好みなわけではない、しかしもう少し小さい身体に控えめな胸が欲しかったと願うことも少々。 本当に無いものねだりというわけだ。 そう思いながら千里を見ると、女性らしい体つきなので、こいつの出で立ちが私の思う理想の女性の身体着きなのかもしれない。
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