性癖、それは正義であり悪

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 今日の夕飯は野菜炒めと決まっているので、さっそく冷蔵庫から野菜数種類を出して、切り刻む。 肉も少々加えて、塩コショウで味を調えながら焼肉のタレで味をつけ、簡単野菜炒め焼肉のタレ味の完成だ。 「一人暮らしだ。 おかずが数品あると思ってくれるなよ」 「分かってますよ。 多かろうが少なかろうが春さんの手料理なのでおいしくいただきますね」 「そうか、じゃあごはんよそってくるから」 「ご飯って朝たいてるんですか?」 「そうだが?」 「できるだけ食べる前に炊いた方がおいしいですよ?」  そうなのか。 よし、いいことを教わったな。 ご飯をよそい持っていく。 じゃあ今日は朝炊いたご飯で我慢してくれ、と頭の中で言いながら机に置く。 箸とかは千里に用意させたのでちゃんとある。 よし、それじゃあ、 「「いただきます」」  二人してもくもくと食べ始める、はずだったのだが。 千里が無駄に料理を絶賛するので、静かに夕飯を食べることが出来ずにいた。 千里、せめて静かに食べてくれ。 ただただそう思いながら野菜炒めを食べていた。 「千里」 「はいなんでしょう?」 「静かに食べるという選択肢は?」 「ありますよ?」 「あるなら静かに食べてくれ」 「分かりました~」  こう言うと、千里は静かに食べだした。 良かった、多分。 束の間の平和だ、多分。 そして野菜炒めとごはんはすぐになくなった。 私はたいして食べていないので、千里が大多数を食べたことになる。 何故こいつは細身なのにこんなに食べれるのか、という謎が残る形になる。 「さて、片づけるか」 「手伝いますよ?」 「あいにく、他人に家事を任せることが出来ない人間でな。 大人しくそこにいてくれ」 「は~い」  言うことを聞いてくれたし、これもまた束の間の平和なのかもしれないな、と考えたところで気付く。 平和ってなんだろう。 社会系の授業での平和は戦争のない状態を言うのだろうが、この状態はどうなのだろう。 いや、そんなことどうでもいいのだ、それで間違いないし、正解でもないから関係ない。 問題ない。  その日、片付けが終わり、他愛もない話をし、千里が帰って行ったのは十時くらいだった。
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