24人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなことより早くこの人どうにかしてくださいよ……」
「あら、素直にならなきゃ損よ?」
「ボクが体を許したのは春さんだけなんですから!」
そんな話初めて聞いた。 が、今はそれは関係ない。 さて、こいつはどうしたものか。 考えても始まらないので、一つの方法を試す。 そう、こいつ痴漢です宣言。 これが一番いいんじゃないかと考えた。 あ、いや、こいつ女だし、千里男だし、中身だけで見てくれ女だけど。 とりあえず宣言するか素直に駅員のところに連れて行くのが妥当か。
「とりあえず、次の駅で降りてもらえます?」
「良いわよ。 丁度そこで降りるつもりだし」
「ひとまずその手を話してくだひゃいっ!」
「それ、痴漢であってると思うけど、情状酌量の余地はないと考えていいか?」
「逆セクハラって興奮するでしょ? それだけでご褒美になるから大丈夫よ」
だいじょばないのが日常です。 いや、これ私の思ってる日常じゃないわ。 どうするにしてもまず駅に着いたので駅員のところに連れて行くことにした。
駅員はいい人で、速攻女をどこかに連れて行った。 その時問題になったのは痴漢が完全なる現行犯だということ。 私たちが見てたからじゃなく、駅員の前に着いて、連れて行かれるまでずっと千里の尻を揉んでいたからだ。
やっと解放された千里は顔が真っ赤で息を荒げて膝に手を置いていた。 お疲れさん。
「なんだったんですかあの人」
「分からないけど変態と言うことだけは分かった」
「でしょうね。 ボクああいう人苦手です」
「それって――」
同族嫌悪か? そう言おうとしてやめた。 多分それがこいつのためになるだろう。 自分で変態と気づくまではそっとしておくことにする。
電車に乗り直し、目的の駅へと向かう。 後二駅。 それまではさすがに何かあるわけでもないだろうし、大丈夫だな。
「春さん春さん」
「なんだ?」
「あの人ずっとこっち見てるんですけど」
「あの人?」
千里の指さす方には、無難なイケメンがこちらを見ていた。 ぱっと見ならよさそうな人間だが、こいつもなにかおかしい気がする。 あ、近づいてきた。 なんだこいつは。
「一目ぼれしました。 私とセック――」
「黙れそして一片くたばれ」
「春さんの初めてはボクの物ですから誰にも上げません!」
あぁ、平穏、カムバック。
最初のコメントを投稿しよう!