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「ひとまず名前を教えていただけないでしょうか?」
「知らない人に個人情報を教えてはいけないって親に教わったが、どうすればいい?」
「春さん! こんなのに教える必要ないですよ!」
「春、というのですね。 良い名前です」
こいつは馬鹿なのだろうか。 あくまでも教えないつもりだったのに千里のせいで名前が漏えいした。 そういう意図をくみ取ってもらえるとありがたいが、さすがに何も言わずにそういう意思をわかるって言うのは無理難題なのだろう。
「申し遅れました、自分深頭光と申します」
「あぁ、どうも。 みかしらってだいぶ変わった名字だな」
「家庭の事情ということで」
「中原千里と申します」
「噂はかねがね伺っております」
「噂?」
「可愛い男の子がいると言う話を」
なんだその噂。 というか校外にもそんな話出てるんだな。 なんだ、こいつ有名人じゃないか。 私いなくても大丈夫じゃないか? すると深頭とやらは千里の手を取り、握手すると、千里はそれを振りほどこうとするが出来ない。 これは深頭が強く握ってるのか、千里が力足りなくて振りほどけないのか、と言ったところだろうか。
「良かったじゃないか。 男の娘人気って最近あるんだろ? 相手には困らないじゃないか」
「ボクは春さんが良いんです!」
「それは譲れませんね。 春さんのハートを射止めるのは自分なのですから」
はいそこー、変なバトル始めないの。 というか、もう駅付いたんですけど。 放っておいて降りるか。 改札を通って、駅の入口に来たところで気付く。 あ、今日は千里の買い物についてきたんだったよ。 あいつ放っておいたら意味ないじゃないか。 そう考えて、携帯電話を手に取る。 発信先は千里の携帯電話。
「どうだ、いざこざは終わったか?」
「春さん! 今どこです? 周りにいなくて探しましたよ」
「駅の外」
「すぐ行きますね!」
千里がやってきたのは数分後のことだった。 しかし面倒なのは千里だけでなく深頭もついてきていること。 なんでこいつ連れてきたし。 聞くと、なんか仲良くなったらしい。 変なところで結託してんじゃないよまったく。
「で、どこ行くんだ?」
「こっちです、行きましょう」
「自分としても、千里君がどういう服をチョイスするのか気になりますね」
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