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「よし、決まりだ。どうする、ついでにジュースでも賭けねぇか」
「いいね。じゃあ俺は来る方に賭けるよ」
「ちょっと待て、俺も来る方に賭けたい」
「なんだよ。それじゃ面白くない。賭けにならないぜ。」
「じゃあお前が来ない方に賭けろよ。それで丸く収まる」
「それは」
「何がなんでも俺は来る方に賭けるぜ。これは譲れねぇ」
「お前、そりゃ本気で言ってんのかよ」
「当たり前じゃねぇか。俺は何時だって本気だぜ」
「そうだったな」
「ははっ」
お互いにしばらく顔を見合わせ、そのあと腹がいたくなるまで笑った。どうやら俺達はまだ諦め切れていないようだ。これだけ打ちのめされても、俺達の心は未だ死んでいなかった。
「じゃあ来ない方に賭けるのはこの桜ってのはどうだ。こいつはキツツキが来ると穴ぼこになっちゃうしな」
「そりゃちがいねぇ」
二人で顔を見合わせまた笑った。笑えば笑うほど気分も軽くなる。ひとしきり笑ったあと、喉が乾いた俺達はラケットバッグから飲み物を出して一息ついた。空は相変わらず爽やかなブルーだ。
「キツツキ、来るかな」
「きっと来る。なんたって悪い運は今日の試合で全部出しきったじゃねぇか。おい、ほら見てみろ」
俺は相方が指差す方向に顔を向けた。中型の鳥が一羽、こちらに向かって飛んできていた。心なしか嘴が長いようにも見える。
「キツツキっぽくねぇか」
相方はペットボトルを片手にニヤッと笑った。
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