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誰かが自販機に小銭を入れる、カチャンカチャンという音で僕は目覚めた。近頃どうも落ち着かない。数時間後には単位の懸かる切羽詰まった試験があるような、そんな感覚だ。 寝返りをうち、右手で枕元のスマートフォンを自分の方に向ける。深夜3時だ。下の自販機でコーヒーでも買って、小説でも読みながら朝を待とう。 部屋の正面に設置された自販機でホットコーヒーを買う。四月の初めに入り、ようやく寒さも緩んできたはずなのだが、今日は随分と肌寒い。両手で包み込むように缶を握り、手を暖める。 コンクリートの壁に寄りかかり、一息ついて回りを見渡す。道を挟んで向かいにある公園で見事な桜が咲いていた。 近くで見ようと道路を渡り公園に向かう。間近で見る桜に溜め息を漏らし、側にあるベンチに腰かけた。コーヒーに口をつけ、唇でその暖かさを感じる。
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