2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「もう、辞めちまうか」
俺の問い掛けに相方はすぐには答えなかった。しばらく彼は青い空の一点を見つめていたが、やがてポツリと呟いた。
「キツツキ」
「は」
「毎年春先、この桜の木にはキツツキが来るらしい。今年はまだ来てねぇみたいだが、これで俺達の進退を賭けてみよう」
相方は空を見つめたまま話続ける。
「今日、今日だ。日がくれるまでにキツツキが来なかったら俺達は部活を辞める。来れば続ける。ついでに自主練を今までの倍に増やす。これでどうだ」
「この木にキツツキが来るなんて話は初めて聞くけど」
「来る、らしい。俺もまだ見たことがない」
俺は「へぇ」と返しつつ側にある桜の木を見上げた。二股に別れた先が折れている枝に穴がある。キツツキが開けたように見えなくもない。
「もうどうだっていいさ。悪くないかもな。馬鹿馬鹿しい賭けで培ってきたものを棒に振るってのも」
最初のコメントを投稿しよう!