キツツキ

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「もう、辞めちまうか」 俺の問い掛けに相方はすぐには答えなかった。しばらく彼は青い空の一点を見つめていたが、やがてポツリと呟いた。 「キツツキ」 「は」 「毎年春先、この桜の木にはキツツキが来るらしい。今年はまだ来てねぇみたいだが、これで俺達の進退を賭けてみよう」 相方は空を見つめたまま話続ける。 「今日、今日だ。日がくれるまでにキツツキが来なかったら俺達は部活を辞める。来れば続ける。ついでに自主練を今までの倍に増やす。これでどうだ」 「この木にキツツキが来るなんて話は初めて聞くけど」 「来る、らしい。俺もまだ見たことがない」 俺は「へぇ」と返しつつ側にある桜の木を見上げた。二股に別れた先が折れている枝に穴がある。キツツキが開けたように見えなくもない。 「もうどうだっていいさ。悪くないかもな。馬鹿馬鹿しい賭けで培ってきたものを棒に振るってのも」
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