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「冴男スピーチ考えた?」
そろそろ聞かれると思っていたよ。
だから、ゆっくり息を吐いて答えた。
「ふぅー。まだだけど・・・。」
少しの沈黙。
「ハァー。頼むよ冴男。式は明後日だからね。僕と由希の晴れ舞台は一発ドカーンって笑い起こすか、号泣の感動モノで頼むよ。アハハ。」
全然笑えないし、冴と真利ちゃんの間にはテンションの差がありすぎるんだけど。
てか、冴は何も考えたくないし。
「真利ちゃんのムチャブリはたくさんしてきたけど、今回ばかりは許してよ。」
冴らしくない、少し冷たい感じで答えてしまった。
「冴男の困った時って本当にかわいいなぁ。でも冴男は優しいし、マメだから絶対素晴らしいスピーチしてくれるって信じてるよ。アハハ。」
その一言を残して電話が切れちゃった。
鋭い真利ちゃんなら冴がスピーチをしたくないことに気づいているはずなのに、どうして冴にさせようとするんだろう。
わざと冴にさせようとしている気がするなぁ。
もしも、冴がスピーチを考えたとしても、言いたくない・・・
てか、結婚式自体出たくない。
そうだ!
風邪ひいたことにしようかな?
別に真利ちゃんのことが嫌いなわけじゃないよ。
むしろ好きだし。
いや、その、勘違いしないでよ?
冴はちゃんと女性が好きですよ。
・・・たぶん。
そんなことは置いといて、実は真利ちゃんを大嫌いな時期もあったんだ。
というよりも、一歩踏み出さなかった自分が嫌いだったなぁ。
真利ちゃんは明後日に冴が本気で好きだった、りんちゃんと結婚式を挙げてしまうんだ。
なぜか皆からチャラ男と呼ばれていたけど、冴が本気で好きだった相手は、りんちゃんだけ。
自分の気持ちにも鈍感だった冴は気づくのが遅過ぎたみたい。
気づいた時には、もう真利ちゃんが奪っていたんだ。
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