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あの人は来ない…。
月の終わったカレンダーをゆっくりと破る。
佐久良さんが来たあの日からもう4カ月は過ぎた。
カットした髪は今頃、バサバサに伸びて、すっきりと出ていた耳は伸びた髪で隠れているだろう。
来店の催促する葉書は先月送った。
だけどあの人は来ない。
『ヘッドマッサージは君がしてくれるのか…。』
耳を塞ぎまぶたを閉じる。
鏡越しに僕を見るあの人の視線と甘く響くバリトンの声を思い出す。
だけどもう靄がかかり、動かす口は音を出さない。
思い出さえも霞んできている…。
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