この恋は春風に抱かれて…

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「髪型はお決まりですか」 長さを確認し、質問した。 「いや…」 バリトンに近い低い声にチラッと客の顔を見た。 前髪で目が見えないが、鼻筋はきれいに通っている。輪郭はスッキリとして肌が綺麗だ。 真木は近くのブックラックから2冊のヘアーカタログを選び、適当なページを開くと客に見せた。 「こんな感じはいかがですか」 それでもと思い、客に見せた。 「なんでもかまわない」 雑誌に見向きもしないで、一言そう言われ、僕は仕方なく「そうですか…」と答えて雑誌を閉じた。
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