この恋は春風に抱かれて…

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量が多くて、黒く太い髪。 目を隠すように伸びた前髪をまとめ軽くクリップで止めた。 「あまり髪を切る時間がないようですね」 シザーを動かし続けながら話しかけた。 「……」 無言で小さく頷かれ、僕は思わず苦笑いをしてしまった。 きっと佐久良さんは人見知りをしているのかも…。 そう思い、このあとは話しかけずにシザーを動かし続けた。 (でも声が聞きたい…) チラッと鏡越しに佐久良さんの顔を見た。 一重のはっきりした目、意外にも整った眉毛…。 静かに正面を見ている佐久良さんと目があったような気がした。
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